保険診療のアクリルレジンで製作した入れ歯を使用していた患者様が、自費の入れ歯に変えられたときに、おっしゃったことがとても印象的でした。
「先生! もっと早くこの入れ歯(金属床義歯)を私に教えてくれればよかったのに・・・」 私は心の中で申し訳ない・・・と思いました。
私は自分自身の経験で入れ歯で食べ物を食べたことがありません。
ですから、このようなお話を患者様からお聞きしないと、入れ歯がいいと食事が美味しくなる、その良さがわからないのです。
これが単に舌で味わうことだけなら、どこかの割烹や鮨屋で、実際に食べてみて、自分の実体験をグルメ評価できますからグルメ評価して、その中から皆さま方へご紹介できるようなら私のお薦めを正直にをお伝えすることができますが、歯科医師でありながらその評価は「他の患者さまからの伝聞をお伝えする」ことになります。
悪い言い方をすると、「自費治療を勧める」ときって当方にもためらいがあります。高額な入れ歯を勧めるのは「売り上げを伸ばして、わたし(患者様)からお金を支払わせようとしているのかしら」と思われたら、誠意が邪心に見えそうで微妙な気分になります。
でも、このときって外科医が患者さんに「長生きしたいですか?長生きしたいなら私が診断した手術法でやった方がいいですよ」と言うのと同じ気持ちなのです。
さて 食べ物で言いかえれば「素材の良さ」「素材を活かす調理法・職人の腕」「味の深みを作る下味・下準備の確かさ」が満たされると、美味しくなります。これを義歯に置き換えてみましょう。
| 素材の良さ | アクリル | <<< | 白金加金・チタン |
| 調理法 | アルジネート一発印象 | <<< | シリコン個人トレー使用精密印象 |
| 腕 | 保険専門技工士 | <<< | 自費専門技工士 |
| 下準備 | 保険専門技工士 | <<< | 自費専門技工士+ 歯科医師の設計・修整 |
こう書くと、どれもこれも違うくらいに違うのです。そして本来はそこまでしなければいい入れ歯はできません。それが保険診療では千数百円か総義歯でも3千円程度でできあがってしまいます。
かつてNHKのテレビ番組で、アナウンサーが義歯を作っている保険技工士にインタビューした折に「入れ歯に形が似たものを作っているだけで気持ち悪くなってくる。」と賃金に割に合わない入れ歯の製作をして生計を立てている身を嘆いていました。
保険の技工士が上手くない!と私も患者様から指摘されたこともありましたし、実際に治療していると、前回私が記録した形態が次のステップに反映されないで歪んでいるのによく遭遇します。
そういうときは技工士も苦しんでいるんだから患者さんが良く噛めるように自分も頑張ろうと思って、合わない義歯を一生懸命調整して少しでもよくなるように努力します。 でも、考えてみると、ちょっと変な感じしません?
入れ歯の治療費って、テレビやボロい中古車、オーディオ機器くらいの値段だと思いますけど、いい入れ歯を作ると山本歯科医院で作った入れ歯では、ほとんどの皆様方は10年以上も具合良くその入れ歯をお使いになっています。
さっき比較したものなんか日常ずっと使ってなくってもそんなに長期間動いてくれませんよ!耐久性はすごい!と我ながら感じます。
「1500円の入れ歯で3000円の特上寿司食べても旨いのかしら・・・」 ちょっと心配になります。

